参院選

参議院「国盗り物語」
1人区で自民党から議席を取り返せ

1、参議院選挙区も小選挙区制に近づいている

7月28日に参議院選挙区を10増10減とする公職選挙法改正が成立した。与党内部での争いとなる鳥取と島根、徳島と高知の合区が大きな話題となった改革案であるが、本当のポイントは改選議席における「1人区の増加」にある。
合区された4つの選挙区は、もともと1人区で、この改革案の前までは31選挙区が1人区だった。これが合区によって2選挙区減り、新たに、宮城(2→1)、新潟(2→1)、長野(2→1)の3選挙区が1人区となって、合計32選挙区となった。

定数(*32選挙区が定数1、今回の変更は赤字)

北海道・東北 北海道 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島
3 1 1 1 1 1 1
関東 茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈川
2 1 1 3 3 6 4
中部 新潟 富山 石川 福井 山梨 長野 岐阜 静岡 愛知
1 1 1 1 1 1 1 2 4
近畿 三重 滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山
1 1 2 4 3 1 1
中国 鳥取 島根 岡山 広島 山口
1  1 1 2
四国 徳島 高知 香川 愛媛
1 1 1
九州 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄
3 1 1 1 1 1 1 1

増えたのはたかが1選挙区と思うかも知れないが、この1の変化は、与野党の議席数としては2議席差に、3年に一度の改選を考えると4議席の差となる。思えば、これまでの参議院改革/定数是正は着実に1人区を増やしてきたものだと言うこともできる。
ちなみに参議院定数(議席数)は242、改選議席数121、そのうち選挙区定数73、比例区定数48である。今回改正では、選挙区定数のうち複数区が13、1人区が32となった。定数は変わらないが、選挙区数は47から45に減ったということになる。
1票の格差是正だから仕方ないと思われるかも知れないが、大都市部での中選挙区化と地方での小選挙区化が静かに進行している。定数で見ると複数区41、1人区32と、大都市部が圧倒的に多い。そういう選挙区では、与野党がせいぜいイーブンで分ける。しかし小選挙区と化した1人区では、これまでは、常に与党(自民、公明)が勝つという構図になっている。
比例区の改選議席数は48でしかない。ここで仮に、野党側が6割をとったとして28議席。選挙区では複数区の半分以上をとったとしても議席数21。合計49で、改選議席121の40%程度にしかならない。1人区で野党側が勝たない限り、参議院での与野党逆転も起きないということだ。

2、二度あることは三度ある

ちなみに前回参議院選での選挙区での獲得議席は自民党47、公明党が4で、与党は51議席。民主党10、みんなの党4、共産党3、維新の党2、沖縄社大党が1、無所属2で合計22。51対22だった。31の1人区では、岩手、沖縄をのぞく29選挙区を自民党が取った。
野党側はずっとこんな調子だったのだろうか。いや違うのだ。土井たか子委員長を擁した社会党時代、1989年の1人区は26選挙区だったが、前回選挙の1勝25敗から、23勝3敗と大逆転を果たした。「山が動いた!」選挙である。
2007年にもある。第一次安倍内閣のときだ。このときは「消えた年金」問題が注目を集め、民主党が29の1人区のうち26選挙区で勝った。その後に安倍総理は「腹痛」を起こして突然退陣する。そんな二つのドラマがあったのだ。
昨年の衆議院選挙で、緑茶会は「戦略的投票」を訴えた。野党側候補が乱立しても、有権者が候補者を一人に絞るという戦略だ。それを政党側の調整で実現して見せたのが北海道ブロックの民主党だった。逆に乱立をそのままに、民主党が惨敗をしたのが南関東ブロックの千葉県だ。もう、どうすれば良いか答えは見えているだろう。
共産党の「国民連合政府」構想とそのための選挙協力の提案も、そのような背景から生まれたものと積極的に評価をしたい。複数区では野党同士の争いもあるだろうが、肝心なのは「1人区」である。ただ選挙協力の旗を掲げるだけでなく、野党連合の「統一候補」を、1人区すべてで擁立するくらいはやってほしい。
野党といってもいろいろだ。自民党の別動隊といえるような党もある。「維新の党」が分裂し、橋下おおさか維新の会が生まれた。おそらく各地の選挙区に候補者を立てまくる可能性がある。これは、自民、公明にとっては願ってもない状況ということではないだろうか。
自民党に1人区の総取りを許すのか、それを切り崩して、参議院選で「反安倍」勢力が勝利して、政権を引きずり下ろす足がかりとなるのか。それがわかっていれば、いまさら野党側での勢力争いなどしている場合ではない。

(竹村英明)

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